★mission9:ダメ部長を防衛せよ?★

「やったぁ!」
セウルはうれしそうに声をあげた。
その様子に、二人は少し苦笑しつつセウルを見た。
全く、困った部長である。

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「そういえば、お前らってどうやって生活しているんだ?」
徹はふと、まとまった話がおわったので気になったことをセウル(これからは自分の上司かもしれない人)に聞いてみた。
「え?本部の方がその支部のお金や至急品・アパートなんかも全部用意しておいてくれて、それなりの生活はできるんだ。」
現在昼ごはん時。
徹に説明しながらも食べ続けるセウルはよほど春歌のご飯がおいしいらしくおかわりを申し出ている。
「そうなのか?でも、それにしては・・・。行き倒れてたじゃん。」
そんなセウルに徹は思わず言葉を漏らす。
確かに。なんせ、初対面でごみと間違えるほどぼろぼろに行き倒れていたのだ。
まさか、セウルのことだから食費に全部使ってしまったとかそういう落ちなのだろうか。
「・・・・・・。」
「どうしたんですか?」
思わずご飯を食べる手が止まったセウルに、心配そうに聞く春歌。
「・・・・・・実は俺さ……。本部に忘れてきたみたいなんだよ。」
「…?何をですか?」
「荷物。」
「え?」
思わぬ発言におもわずそんな声が出る2人。
「俺、行き倒れていたろ?本当はあんな事になるはずじゃなかったんだけどさ、
 俺、どうやら本部に支給荷物忘れてきちゃって、こっちのお金つかったりとか、
 本部との連絡とかあんまりできないんだよねぇ・・・。最近は公園で野宿さ。」
「……。」
遠い目で語るセウルに思わず声が出ない。なるほど。この男ならやりそうである。
「本部が異変に気づいてくれるとうれしいんだけど、俺、至急品の本部帰還の魔法具も持ってないから取りにいけないし……。
 多分どうにか持ってきてくれるとは思うんだけどさ・・・。
 だからと言ってこれから気づかれるまで、どうやって生活すればいいかわから無いし……。」
そう言ってため息をつくセウル。そんなセウルを見て春歌は声をかけた。
「あの、セウルさん、その副部長さんが来るまでここにいませんか?
 私とおにいちゃんだけですし、ゲストルームもありますから…。」
「えっ!いいの?」
「はい。」
まさに、聖母マリアと捨て犬
「春歌!?」
目を輝かせているセウルとにっこりと微笑む春歌のやり取りに徹は慌てた。
大切な妹が自分外の男と一つ屋根の下・・・。そんなのこのシスコンは黙ってはいない。
「だって、ほっておけないでしょ?」
「うっ…。」
そんな徹の様子に思わず小さい子に注意するような口調で言う春歌。


たしかにそうだ。これから自分が手伝いをすることになる人、しかも物事を一番把握している人間が浮浪者だとは、
連絡がとりにくいにもほどがある。
それに、セウルがいると、また危ない目にあったときに自分が仕事だったときでも春歌を守ってくれるかもしれない。
妹と屋根の下で暮らしていいのか、でも、危険な目に会わないように近くで春歌を守らせる方が・・・
兄の中で少し心の葛藤が行われた。
「分かった……。ただし、条件付だからな?」
結局、妹には逆らえない徹であった。
当然心の中では春歌のボディーガードになってもらおうという言葉が渦巻いている。
「おう!了解。」
そんな徹にセウルは無邪気に笑った。


こうして、藍瀬家に不思議な居候が住み着いたのだった。





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