★mission7:とりあえず、理解能力を防衛せよ★

「つまり、セウルさんはこの世界の者じゃないと……。」
「そういうこと。」
おどろきつつ、つぶやく春歌の言葉に頷くセウル。
さっきから不思議な事ばかり起きていたのも彼が魔法使いだという言だと納得がつく。
なんとなく、只者じゃないと思っていたが、まさか異世界の人間だとは……。
普通なら信じられないのだが、信じられないような事ばかり起きているのだ。
なら、…この男の言葉を信じるしかない。
徹はため息をついてセウルを見た。
「で、なにがあってその異世界の住人のお前が東京にきて俺達の力を借りたいんだ?」

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「俺達、サージェント=パースはいわゆる俺達の世界を守る警察のような会社だ。」
セウルは、徹の言葉を聞き、待っていましたとばかりに説明を始めた。
「いわゆる魔法や、武術なんかを駆使して、犯罪や、魔法の暴走、違法な研究…  まぁ、いろんなものを取り締まっているんだ。
 その中でも特に厄介なものが「ダバ」だ。」
ダバという名前を出すとセウルはさっきまでよりも真面目な顔をした。
「ダバ……?」
「そう。」
春歌の言葉にセウルは頷いて、説明を続ける。
「ダバは、一種の精神体生物で・・・寄生虫のようなものかな。
 あいつら好物は負の感情。幼児期に負の感情を多く持つものの心に入り、
 そのものをコントロールして負の感情を増やす。
 そして、少しずつそのものの中で成長し、いつか完全体になると
 寄生している者の感情を負一色にしてしまうんだ。
 負一色にされたものはダバに完全に操られ、他のものを傷つけたりする事で周囲の負の感情を作る。
 成長して最後には…操られたものは自我のない殺戮を繰り返す負の感情の塊へと変わる。
 やっかいな悪魔の生物と言われている。」
説明をしつつ顔をしかめるセウル。その顔からは明るい先ほどまでの雰囲気はない。
「本当に恐ろしい生物だ。しかも高い知恵をみにつけている。
 俺達の目をかいくぐるから幼児期に発見するのは誰でもできるわけじゃない。
 謎が多いダバは特殊な力を持つもののみが発見する事ができるんだ。
 それに、完全体になったらもう、サージェント=パースの能力を使って捕らえるか、
 間に合いそうに無い場合、その操られたものごと殺すしか出来る手段がないんだ。」
「……異世界にはそんな恐ろしい生物がいるんだな。」
そんな恐ろしい生物がいることに徹は眉をひそめた。
別の世界の話だとしても、かなり恐ろしい生物だと感じた。
多分、この少し物騒な世界だと、この生物はどうなってしまうんだろうか。
考えるだけで怖い。
「…で、この日本に俺が来た理由、実は本部で捕獲していたダバが時空のひずみによって「地球」に逃げ込んで……。」
「・・・・・・。」
セウルの言葉に一瞬青くなる2人。
「なっ、なんだとぉ!?」
「えぇ!?」
さっきまでのダバの話が2人の頭の中を駆け巡る。
「大きな声出すなよぉ。」
「出さずにいられるか!その時空のなんとやらのおかげでそんな恐ろしいものがこの地球にいるのか!?」
「うっ…でも怒らないでちょっと話を聞いてくれよ。」
もっともな徹の言葉におびえるセウル。
「時空のひずみだよ。玉に異世界同士にできるこっちの世界で言う、え〜っと…。
 ブラッドピックじゃなくってブラックコーフェーじゃなくってえっと…。」
「…もしかしてブラックホール?」
「そう。それだ!」
春歌の言葉にセウルは頷く。
「そのブラックホールみたいなもの。不定期に何処の世界の何処に現れるか分からないんだけど、
 どうやらそいつがダバの収容所に出てきたらしくってさ…。」
「へぇ?それがついこのあいだなのか。」
「いや、えっと…こっちの世界で言う夏って季節のとき。」
 …プチッ
「今はもう春だぞ!何でこんな時期になったんだよ!!」
そんな恐ろしいものが潜伏しているって言うのに今までほったらかしとはかなりひどい警察だ。
話の通りの時間軸だとすると、潜伏してもう半年はたってしまっている。
もしも、この世界でもその生物が寄生を始めていたら・・・
「だ、だって、ダバが「パーソ界」っていう全部の世界とつながる場所まで降りたのはわかったんだけど
 そこから居場所がリンクされた世界を探すのに手間取ったんだよ。
 異世界っていうのは日に日に数が変わっていくから…。
 それに、ダバも動き始めたのは今年に入ってからみたいなのはどうにか判明しているし……。
 で、やっと最近、何処とつながってしまったのかが判明したんで、本部で対策を立てて、俺が派遣されたんだ。」
「へぇ。」
ようやく社会人らしい面を見れたというべきかなんと言うか・・・。
まぁ、これでも早い対応なんだぞと目の前で言うセウルに免じて、徹はそれ以上の言及はしないことにしておいた。





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