★mission6:兄の心労を防衛せよ★

「よっしゃぁ!」
そんな言葉が隣で聞こえるが徹はもうそれどころではない。
何がなんだかさっぱりである。
ただ一つだけ分かるのは、
現在自分はとんでもないことに巻き込まれているという事だけである。

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「いやぁ、疲れた。」
セウルはそう嬉しそうに言う。
「ちょっとまて!そういう問題じゃないだろ!」
そんなセウルに徹はそうつっこみを入れる。
「一体どうなっているんだよ!」
「そうですよ!」
「まぁ、一段落着いたんだし落ち着こうぜ。」
セウルにそう言ってくる藍瀬兄妹を見てセウルはのんびりとした口調で言うと、
春歌が出してくれたお饅頭を手に取る。

たしかに、あの倒れてしまった少年は意識を回復して不思議そうにこの家から出て行ったし、
戦いの場であったベランダもいつの間にかすっかりきれいになっている。
そう考えると現在セウルの言うとおり一段落はついたのかもしれない。

「…って、そんなわけあるか!」
いきなり起こった出来事の数々を思い出し、そう大声でセウルに言う徹であった。


「…お兄ちゃん、もっと冷静になろうよ。」
しばらくの間、そんな言い合いが続いたが、ようやく冷静になってきた春歌はそう苦笑しつつ兄をなだめた。
もちろん彼女もこのわけのわからない出来事の連続にパニックであったりする。
でも、だからといって、こんな言い合いをずっと見ていると、冷静になってくるのも納得である。
「そうそう。お菓子を食べつつ……。」
春歌の言葉にうなづきつつ、セウルはさっきから食べ続けているお饅頭の7個目を手にとろうとする。

ペシッ

「食いすぎだ。」
そんなセウルの手の甲をペシッと叩くと徹はセウルを睨む。
「こんなわけのわからない事に巻き込まれてこっちはパニックなんだ。ちゃんと説明しろ。」
春歌の言葉でか、ようやく落ち着いたらしく、普段の自分を取り戻しつつ徹はそうセウルに言った。

「そうだな。おなかもいっぱいだしな。……よし。」
セウルはそう言うと立ち上がり一つのカードを手に取った。
「説明するよ。」
セウルがそう言うと同時に、カードが光りだし、その光が大きなビルらしき建物を映し出した。
どうやら、立体映像を映し出すカードのようだ。


「これは……?」
「これは、サージェント=パース本部だ。」
「これが?」
徹の質問にセウルは答える。
この、いかにも巨大な組織である感じの大きく立派なビルを2人は見つめる。
と、カードは次にビルの周りの景色を映し出した。
その景色に呆然とする2人。
「っておい……このビルはどこにあるんだよ。」
徹はそう言うのがやっとだった。
「守護聖都市『ラオス』さ。」
「そう言う意味じゃなくて!」
セウルのその平然とした答えに徹はつっこむ。
「これはどこの国にあるんだよ一体!それともなんかのテーマパークか!」
徹は景色の映像を指差しそうセウルに言う。
そう。その景色はかなりおかしい。
空を飛び回る人。
羽を持つ豚。
どこに住んでいるのかもわからない不思議な生物。
どこかのファンタジーの世界や、ゲームのキャラクターのような格好の人たち。
そう。その風景はこの地球のものとは思えない不思議な風景だったのだ。
「いや。テーマパークなんかじゃない。」
セウルは二人の反応を見て笑うと立ち上がる。
その次の瞬間、驚く事が起きた。セウルの体は浮いていたのだ。
「なっ…!?」
「驚く事じゃないだろ?さっきもみただろ?俺が戦いで魔法使うところ。
…俺は日本語で言う『異世界』というところの住人だ。」
二人にそう言うと、セウルは再び床へ着地した。





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