★mission10:美少女(?)を防衛せよ★
「ついに、見つけたぞ……。」
男は屋根の上に立つ女性に言う。
「今日こそ、つかまれ!」
「そうはいかないわ。」
女性はひらりと男の攻撃をかわし、さっそうとにげた。
「待て!」
男の言葉を背中で聞き、女性はつぶやく。
「待てはしない…。私は、あなたに捕まる訳には行かないもの……。」
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「はいカットォ!オッケーです。」
そんな声が響きあう中、ようやく緊張から解放された男は椅子に座りため息をついた。
さっきまできっちりと着ていた衣装のネクタイを緩める。
現在、もう日付が変わろうとしている時間。 ようやく、今日分の仕事を終えたので、気が抜けたようだ。
「ハル、おつかれ。」
男の背後から声がかかり、お茶を差し出される。
「おつかれ、鈴。」
ハルと呼ばれた男はそう共演者の女性にそういい、お茶を受け取った。
ハルと鈴。
彼らは現在人気の若手俳優、青樹 春斗と、人気アクション女優、紅鈴花。
現在、土曜日9時からのT●◎系列アクションコメディードラマ「WANTED’」の撮影中だ。
?
「そういえば、見たか?あの週刊誌?」
「あぁ、あること無い事かいてたあれ?」
収録が終わり、スタッフや共演者たちと飲みに行く道。二人はそう会話を続けた。
週刊誌とは、最近発売された春斗と鈴花が付き合っているという根拠も無い嘘を書いているものだ。
確かに、仕事もいっしょになる事が多く、年齢も近い事から彼らは仲がいい。
業界外でもお互いに本名を知っており、家にもいったことがある。
なのでもちろん、そう思う人間がいることは事実だ。だが、別にそういう仲ではない。
厳しい業界の中、気兼ねなく話せる親友といった所である。
「全く、根も葉もない事いわれると困るんだよな。今朝も、あいつが騒いで煩かったし…。」
ため息をつきながら春斗はそうぼやく。
「あいつ?春歌の事じゃなさそうだけど…誰?彼女でもできたの?」
「いや。ちょっとした…留学生みたいな奴が居候してるんだよ。」
好奇心旺盛そうに言う鈴花に春斗はそう言った。
「あっやし〜。」
「だから、そんなんじゃないって。男だし。」
「えっ!ハルってそういう趣味あったの?」
「違うって言ってるだろ!」
鈴花の言葉にそう突っ込む春斗。
「あはは〜。冗談だって。」
そんな春斗の様子にけらけらわらいながら鈴花は春斗を見た。
と、その奥にふと目に入る人影。
「ねぇ、ハル…。」
「ん?」
「さっきからなんだかすっごく親しげにハルの本名呼んで、手を振っている人がいるんだけど・・。」
「へぇ?」
誰だろう…。
学生時代の友人とかか?
春斗はそう思いながら鈴花が示したほうを見る。
と、そこにいる思いがけない人物を見て春斗は大きな声を出した。
?
「セウル!?」
?
そう。そこにいたのは自分、藍原徹の家にすむ居候異世界人、セウルだった。
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