★mission1:ナゾの男を防衛せよ★

彼は一人歩いていた。
何かを求めるようにただ何かを呟き、足を動かして……。
そしてついに彼は伏していった。

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「お兄ちゃ〜ん、ご飯だよ〜。」
台所から朝食を運びつつ藍瀬春歌はそうリビングの兄に言う。
肩より少し長い髪の毛を、ポニーテールにゆわえ、
それに黄色いリボンをつけ、同じく黄色いエプロンをつけたたその姿はどこか幼く、愛らしい。
「おう。」
兄、藍瀬徹は妹に呼ばれると返事をし、手にしていた台本をいったん片付ける。
すこし長い自分の黒髪を一つに結び、黒いシャツにGパンというだけの簡単な格好がさまに見えるのは職業柄かもしれない。
ふたりは自分の席へとと着席し、「いただきます」と声をそろえた。

いつもと同じ藍瀬家の日曜日の朝である。

「今日は、お仕事ないんだよね。」
自作のハムエッグを食べつつ春歌はそう兄に確認する。
「まぁな。一日中ゆっくりしていられる。」
徹は春歌の言葉に頷き、笑う。
そんな兄妹が朝食を食べながらゆっくりとしていた時だった。

ガタッ

玄関の外で音がする。
その音に気付いたらしい徹は険しい目で玄関を見る。
まだ日曜の朝にしては早い時間帯である。
新聞はマンションの玄関ポストに届けられるし、今日仕事が入るという連絡もない……。
(一体……)
不思議そうに徹はドアのレンズを見る。……が、誰もいない。
(気のせいなのか……?)
少し納得できないように顔をしかめつつそっとドアを開けてみる。あるのはゴミだけで、誰もいる様子はない。
(やっぱり気のせいか……。)
自分の後ろから不安げに見る春歌を見て徹は苦笑した。と、それと同時だった。
「……し……。」
彼の背後でそういうかすかな男の声が聞こえた。
慌ててまた振り返り外を見るが、やはり、さっき同様誰もいる様子はない。
「どうなっているんだ……。」
「お、お兄ちゃん……。」
困惑している徹に春歌は声をかけ、あるものを示す。

「ん……?ってえっ……。」
それが徹が春歌の示した足元を見て発した第一声だった。


つまり、それはさっきまで彼がゴミだと思っていた物体が実は人だったことに対する驚きの声であった。



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