暗い闇の中。
声が響く。
・・・ジ!
…エンジ!
目を開けるとそこは光の中。そして……。

第2話:君は誰?(前編)

「エンジ様!」
「ユンナ…。」
エンジが目を覚ますとそこにいたのはユンナだった。
「やっと気がついたね。」
やれやれとロアが声をかける。
「こ、ここは…?」
「エンジの部屋。いつまでたっても帰ってこなかったから心配で見に行ったらエンジ、
 洞窟前で眠っていたんだからな。」
ロアはそう言うと心配したんだぞと言うようにエンジを見る。
確かに周囲を見るとそこはエンジの部屋である。
「え・・・?眠って・・・いた?」
(あれは、夢だったのか…?)
「そうだぞ。エンジ。」
ロアの言葉に驚くエンジ。それに対し、落ち着いた声が返る。
「父さん…。」
ロアとユンナの後ろから出てきたのはエンジの父親だった。
「領主、カルア様…。」
「ロア、こんな場だし普通におじさんでいいよ。」
ロアにカルアはそう告げると、エンジの方を向き直る。
「心配したんだぞ。エンジ。」
「ご、ごめん…。」
父親の言葉にエンジは罰が悪そうに謝る。
「俺はお前が好奇心旺盛なのはいいと思うが、あんなところで寝るのはどうかと思うぞ。」
「うん…。ごめん。」
「いいんだ、わかれば。…ところでエンジ。聞きたいことがあるんだが。」
エンジの言葉にそう言うカルアはふとエンジのほうを向いて言葉を続ける。
「え?なに?」
「お前、その髪の色は何だ。」
「髪の色…?」
きょとんとするエンジにロアとユンナも後ろで頷く。
「そうですよ!落ち着いたら聞こうと思っていたのですけど
 なんなのですか!その髪の色は!いつからエンジ様は不良になられたのです!」
「え?ユンナまで…。一体どういうこと?」
「エンジ…。」
不思議そうなエンジにロアはやれやれと言うかのように鏡を出した。
「・・・は?何これ?」
鏡の中に映ったエンジの髪の色は美しい真紅に染まっていたのだ。
「エンジ、何これって…気づいていなかったの?」
エンジの素直な反応に驚くロア。
「色を戻そうとしても、強い魔力が関係しているみたいで、治らないんだよ。」
「そ、そうなのか?一体何で…。」
ロアの言葉に首をかしげるエンジ。
周囲がその謎に黙ってしまったその時、
「それについては俺が説明しよう。」
「え!?」
エンジの目の前で声がしたかと思うと、周囲は光に包まれた。
(この光・・・あの時ににている。)
記憶のフラッシュバック。昨晩の出来事が段々と思い出される。
そして、光が消え彼らの前にいたのは白い羽の様な耳を持ったまるっこい生き物だった。
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「キャー!なんなんんですのこれは!」
「…魔、魔物!?それともへんなぬいぐるみ!?」
見てまずでたのはユンナの言葉と驚くエンジの声。
そんな様子に生き物はすこし額にしわを寄せつつ答える
「失礼な。俺は、魔物じゃない。」
(あれ。その声は…あの夢の。)
機嫌悪そうに言う声。その声にエンジは聞き覚えがあった。
「まさかおま・・・」
「まさか…精霊…!?」
エンジの声を遮り驚いたように言うロア。
「そうだろうな。そして、その形態。色・・・結構高位の者のようだな。」
エンジの父、カルアはそうつけたす。
「お。物分りのいい奴もちゃんといるじゃん。」
生き物はそんな2人に満足そうに笑うと胸を張って答える。
「俺は高位精霊。名を、カーキと言う。」
その白く光り輝く姿に4人は見とれる。
「へ〜…って、おい、お前!」
エンジは我に返ったように精霊、カーキを見る。
「ん?」
「お前、俺の夢に出てきた事はないか!?」
「はぁ!?」
意味のわかんないことをこいつはいう・・・
そうその目は物語っている。
周囲もエンジの突然の言葉に意味がわからないと物語る視線を向ける。
「だって、お前の声、俺聞いた事ある気がするんだよ。」
俺へんな事言っているか???
周囲に疑問符を並べつつそう答えるエンジ。
それをみて益々カーキは額にしわを寄せる。
「お前、馬鹿か。それともずっと夢見がちな奴なのか・・・。」
はぁと大きくため息をつくとは続ける。
「銃の見込みはある奴だし、銃が選んだから仕方ないが・・・。
 鈍いというかなんというか・・・使い手の証がだいなしだな。」
そうぼやきエンジをみるの顔は少しエンジを見下している。
「な、なんだよ・・・。」
ちょっとその冷たい視線にひるむエンジ。
「まぁ、いい。きちんと順を追って説明する。お前は・・・。」
カーキがそう口を開いた時だった。

「キャー」
外から聞こえるのは悲鳴。
「何事だ!!」
「なんだ!?」 慌てて窓から悲鳴の方向をみる4人。
そんな慌てる4人の後ろでカーキはつぶやく。
「はじまっちまったか・・・。」
エンジ達の視線の先。そこでは大きな魔物が人々を襲っていた。
「モ、モンシター…!?」
「なっ・・・。」
「なぜ、この居住区に・・・。」
唖然とするユンナと驚くロア。
慌ててやってきた自衛団長と話を始めるカルア。
そしてエンジは、その光景を見た瞬間、窓の外へと背中を向けて走り出した。
「エンジ!?」
「町の人を助けないと!!!!」
ロアにそういうとエンジはそのまま外へ出ようと走り出す。
「エンジさまっ!!!」
「エンジ!!」
ユンナ、そして父カルアの声も届かないのかそのまま去っていくエンジ。
「・・・つっ!相手の状況もわかっていないのに…。」
無鉄砲な息子の行動にカルアはくやしそうにつぶやく。
残念だが、自分はやるべき事がある。離れられない。
「僕、止めてきます。」
ロアはそういうと慌ててエンジの後を追った。

(ほう・・・)

そして、そんなやりとりをカーキは興味深そうに見つめ、
その騒動のさなか、誰に気づかれることも無くゆっくりと消えていった。

(後編へ続く)