★バレンタインSPその2★
バレンタインSPA
『彼と彼女とバレンタイン〜ミズユキ〜』
「水野、遅いっ!」
そう待ち合わせ場所で言う少女に水野は苦笑した。
桜上水を卒業して水野は武蔵野森、
有希は女子サッカー部のある都内の女子高へと進路を決めた。
お互いに別の学校に進学した2人だがこうやって玉に会って近況を報告しあっている。
この様子から、周囲からは『彼氏彼女』と噂されており、実際そう見えるのだが
2人は『何でも話せるサッカー仲間』とだ言い張っている。
まぁ、『恋よりもサッカー!』なサッカー馬鹿なので、仕方がないのかもしれない。
「そういえば、サッカー留学の準備は進んでるのか?」
「まぁね。西園寺さんが手伝ってくれてるし。」
長く話をしていて怒られないということで、
いつもと同じようにバーガーショップの片隅を陣取りおしゃべりが始まる。
女子サッカー部のある高校に進学した有希であるが
彼女は、自分の希望と監督の後押しにより、来月からアメリカへサッカー留学を決めた。
話によると、
自分も世話になっている西園寺監督がいろいろと面倒を見てくれているらしい。
「もう、あと2週間ちょっとで出発か・・・。」
「うん。」
水野がつぶやくと有希はふと窓の外を見た。
この景色ももうすぐ見れなくなるんだ・・・。そう思っているのだろう。
そして、水野はそんな有希をぼんやりと見つめる。
最近、思うのだ。自分にとって、こいつの横は居心地がいい場所だと。
武蔵野森入学して、新しい世界、優秀なメンバーに囲まれても
U−16として、たくさんのメンバーに囲まれても
なんだか物足りないと感じる。
そして、いつの間にか探している。
あの元気はつらつな声、そして姿を。
自分の横でサッカーの話をしているいきいきとしているあの顔を。
玉に連絡を取るだけで安心する。
サッカーをがんばっている、笑顔でいる姿を見ると嬉しくなる。
そんな、『小島有希』という人物の存在を
「タツボン、それってすきなんやない?」
こないだシゲにぼやいた時にそうにやにや笑いながら言われた。
分からない。恋なんて感情よくわからない。
ただ、高校に入ってようやく気づいた事。
こいつの横は、いごこちがいいということを。
何故そう思うのかは分からないが、ただそう感じる。
「ちょっとぉ、水野!聞いてなかったでしょ。」
有希に言われて我にかえる。
「わ、わるぃ。」
「まったく、水野はぼぉっとしているんだから。」
しょうがないなぁという様に有希は笑った。
その笑顔を見てなんだか嬉しくなった自分がいる。
多分、この気持ちの理由はすぐに決着が出るものでもないみたいだ。
でも多分、こいつを大切に思っているってことには変わりないんだろう。
だから、当分は様子見ということで置いておいて、
サッカーをがんばりながら歩いていくあいつをながめつつ
負けないように自分もがんばればいい。
結論は、それからでも遅くないと思うから。
それがお互いにとって一番いい選択だと思うから
「小島、がんばれよ。」
「なによ。改まって。」
水野は有希に言葉をかけて笑う。
そんな水野をまったくというように有希はみて笑った。。
「あ、そうだ。水野、ちょっと早いけどこれ。」
別れ際、有希はそう言ってかばんから取りだすと水野に差し出した。
「ん?」
差し出されたものを、首を傾げつつ受け取る。
それは、かわいらしくラッピングされた小包。
「言っとくけど、お兄ちゃんと同じ位気合入れて作ったんだからね。」
ありがたくもらっときなさいよと言い、
有希はほおけた顔をしている水野にじゃぁねと言って立ち去った。
この後、元、桐原家に帰宅した水野の顔を見て
父親と母親が『息子に春が来たのでは』と喜んだのは
・・・また、別のお話。
++++++++コメント++++++++++++
文庫版購入して笛!熱が再熱しています。
んで、やはりミズユキが大好きです。
昔書いていたミズユキはもっと甘いのだったのですが
改めて読んでおもうミズユキはこんな形です。
中学:名コンビ兼サッカーバカ
↓
高校:離れてちょっと意識・・・恋?
・・・みたいな感じで。
「お兄ちゃんと同じ位〜」の言葉は
有希は水野の事が好きなんだけど、
言い出したくはなくて気づいて欲しくての精一杯。
…ヘタレ王子である水野も
『お兄ちゃんが本命』と毎回聞かされているんだし気づくだろうと。
有希のサッカー留学は番外編で制服着て立っていた事より
高校の途中からだと考え今回こんな形になりました。
・・・うぅ〜。書きたかったもの(妄想)を勢いで書く自分。
もっと表現能力が欲しいです。
ちなみに、オチですが、
水野は桐原パパとママにめっさ見守られているといいと思い
そんな感じで思いつきました。
多分、桐原家から父とともに武蔵野森へ通っているんだと思います。
(文庫版オマケ漫画から推測してですが)