★バレンタインSPその3★

バレンタインSPB
『彼と彼女とバレンタイン〜ロンハー〜』

まだ進化しきれていない心

「ハーマイオニー。」
振り返るとそこにいるのは同じクラスの女の子。
後ろには別の寮の女の子も。
彼女達は口々に言う。
「ねぇ、ハリーとロン、知らない?」
「・・・知らないわ。練習でもしているんじゃない?」
何度も聞かれているその台詞に、もううんざりという具合にハーマイオニーはぼやいた。
「ハーマイオニー、今の何回目?」
後ろから様子を見ていたらしいジニーに『もう数えてないわ』と答え、
ハーマイオニーはため息をついた。
全く、今年のバレンタインデーはついていない。
毎年バレンタインデーになるとうんざりするほど聞かれる、
「ハリーはどこ?」という台詞。
それに、今年は「ロン」が加わったのだ。


確かに最近のロンは前よりも魅力的になったと思う。
自分と一緒に監督生もこなすし、クィデッチのキーパーも頑張っている。
背丈もまた伸びて、少年っぽさの中に大人っぽい空気を感じる様になった
でも、前から魅力はあったわけで・・・今更気づいて騒ぐなんて馬鹿らしいわ。


「ねぇ、それって、ロンの事好きだから?」
バレンタインデーのチョコレートを渡し終えたジニーは、
談話室でハーマイオニーの言葉に聞き返す。
『ずっとそうじゃないかと思っていたの。』
輝く目が、そう物語っている。
「いつも言っているけど、違うわ。友達としてはそう思うってだけよ!
 それに、何度も聞かれてうんざりしているからこんな事考えるのよ。」
「自分に言い聞かせているように聞こえるけど?」
ジニーに即座にするどく返答され一瞬黙る。
その様子にやっぱりと笑うジニー。
・・・あぁ、兄妹だというのに、何故彼女の鋭さが彼にはないのかしら。
ハーマイオニーはやれやれとため息をついた。



「あ、ハーマイオニー。勉強?」
上から声が降りかかりハーマイオニーは声の主を見上げた。
そこにいたのは赤毛の・・・悩みの元凶の彼。
「そうよ。もうすぐ終わるけど。ロンは終わったの?」
「ハリーと今からやるんだよ・・・。」
「・・・でしょうね。」
ロンの言葉にやれやれと思いつつ、言葉を返す。
課題をはじめたら、手伝って欲しいと来るに違いない。
そんな事を考えつつハーマイオニーはロンを見た・・・気になるものが目に入る。
「ロ、ロン…なんなの?それは・・・。」
「え?チョコだけど?今日、バレンタインだからって貰ったんだ。」
そう言ってにかっと笑い、いいだろと言うように自分に見せるロン。
両手で抱えるそれは、明らかに今までよりも量が多かった。

「ハリーには負けるけどさ、結構もらったんだ。」
嬉しそうに言うその笑顔にハーマイオニーは動揺と、何かいらいらしたものを感じた。
…そんな顔、貰った子達にも見せたの?
…そのこたちとどんな話をしてもらったの?
嬉しそうにしているロンに腹が立って、嫌な感情が渦巻きのように纏わり付いてくる。
だからだろう。すごく、自分が嫌な女の子になってしまったのは。
「あ、ハーマイオニーのチョコは?今年もくれるんだろ?」
「あら?別にいらないでしょ?」
嬉しそうに笑って言うロンにそんな可愛げもないことを言ってしまったのは。

・・・
「え?なんで?」
「別に。それだけ貰っているんだったらいらないでしょ?」
「なんだよそれ。ハリーは毎年これ以上貰っているのに今年も渡しているじゃないか!」
「ハリーはハリーなの。」
「ハーマイオニー!?」
談話室の中で声が段々と大きくなる。
「ちょっと、二人とも…。」
勉強道具を取りに行っていたハリー、そして友達と話していたジニーが、
慌てて2人の様子に気づき止める。


しばらくしたら気持ちも落ち着き、
冷静に話せと2人に諭され、周囲の目も痛いので(いつの間にか注目されていたらしい)
談話室の隅で頭を冷やして、話を再会する事にした。
「なんだよ、訳が解らないよ。」
口を尖らせたロンは、ハーマイオニーを見る。
なんで、急に怒るんだよ。別に、怒られる事していないだろ。
目がそう物語っている。
「だって、ロン。そんなにチョコレート貰っているでしょ。」
「だからって、なんでだよ。」
渡したくないといわれているように聞こえる言葉
それがいやで、だんだんとまた声が大きくなっている。
「別にいいじゃない。チョコの1つくら・・・。」
「よくない!」
ハーマイオニーの言葉を遮るロン。そして、ハーマイオニーを見てしっかりと言う。
「僕は、ハーマイオニーからのチョコが欲しいの!」
チョコの1つじゃない。「ハーマイオニーのチョコ」だから。



「・・・チョコ、後で渡すから。」
しばらく沈黙が続いた後、ハーマイオニーは俯いたままそう言うと部屋へと戻った。
何かへんな事言ったかと不思議そうなロン。

ハリー、そして聞き耳をたてていたディーン、シェーマス達にからかわれ
自分がとんでもなく恥ずかしい事を言ったのに気づくのは
・・・また、別のお話。

**********コメント********

5巻頃のつもりのロンハーです。
1巻からはまっているのに初書きです

ハーマイオニーは友達から恋へと変化しているのに気づきつつ、
それをひたかくし(バレバレ)。
ロンは解りやすいのに自分の感情にまったく鈍く、天然のタラシでいてほしい。
『談話室』でうっかり話しちゃって後でからかわれるロンという構図が好きです。
そして、ジニーとハーは恋の相談もいろいろとできる仲のいい女友達でいてほしいです。