●セリフ9『諦めないで』●
今はまだ遠いあのひと。
『あの人の言葉』
藍原久司→高瀬詩織
「あっちゃ〜。やってしまった。」
そうぼやくのはこの部屋の一番奥でパソコンをカタカタやっているあの人。
「タカセ〜、またかよ。」
やれやれと言う様に彼女にそうぼやくのはあの人の近くに座る副会長。
「また株?それともゲームか?生徒会室でやりすぎたらだめだろ!」
「今日はオンラインゲーム…って、
そういうマキノだって私の儲けた金でゲーセンにいってるじゃんっ!」
今年の四月、
生徒会に入ってからいつも見る生徒会長の詩織先輩と副会長の牧野先輩のやり取り。
まぁ、腐れ縁らしいし仲いいからできるやり取りなんだろうけど、
そんな関係が楽しそうで、羨ましく見てしまう。
と、部屋の外からばたばたという足音が近づいてくる。
「か、会長!明日配布の会議資料作り直しです!」
「へ・・・?」
入ってくるなり慌てて言う同じ2年の役員の言葉に一瞬全員が目が点になる。
「どういうことだよ。」
頭を整理しようとその男子生徒に聞く牧野先輩。
さすが、学年首席。瞬時に判断しようとする。
「それが・・今、確認したら
データにおかしい所があるんです。直そうにもデータの元もなくて…」
「はぁ!?お前、今確認したのかよ!そんなもの、早めにしておくのが当然だろ!」
「す、すみません。大丈夫だと思って・・・」
牧野先輩の怒鳴り声に周囲は怯える。凍りつく空気。
でも、僕はそれが変わることを知っている。
「マキノ煩い!ごちゃごちゃ言わないの!」
しばらくして詩織先輩はそう大きな声で牧野先輩に言う。
そして、落ち込んでいる男子生徒にビシッと声をかけた。
「どこのデータがおかしいの?」
「えと・・・5頁からの各クラブ予算です。」
詩織先輩の言葉におどおどと答える男子生徒。
「お前、それ8ページもあるだろ!」
「マキノごちゃごちゃ言わない!」
再び怒る牧野先輩に一喝すると詩織先輩は言葉を続ける。
「さっき怒鳴って反省時間も作ったし、本人も反省してるんだからよし!
そして、あんたも、いつまでも失敗引きずってる時間ないんだし、ぐじぐじしないの!」
「お、おう・・・」
「はい・・・」
詩織先輩に怒られ、小さくなる2人。牧野先輩もこの時の詩織先輩には負けるみたいだ。
「んで、あんたたちも、呆然としないで動くよ!作り直し!!」
僕ら他の役員にもそう渇を入れるとにやりと笑う詩織先輩。
そんな先輩に対し、『無理です』や、『今からですか?』なんて愚痴がかかる。
確かに現在6時を過ぎている。当然だ。
だけどそんなことを許す人じゃない。
「諦めるんじゃないっ!死ぬ気でやればどうにかなるって!」
いつもの言葉。まっすぐに、自信満々に彼女は言い放つ。
「・・・まぁな。死にたくはないけど。」
詩織先輩の声に、牧野先輩がぼやく。周囲に笑顔がこぼれる。
元の穏やかな、活気にあふれた部屋に戻る。
そしてそれは、彼女の力。
そして、あれから1年。
彼女が卒業して、彼女の席には今僕が座っている。
部屋に入る。あのころと変わらない景色が広がっている。
まだ、彼女のような魅力のある会長ではないけど、
僕は僕なりにやっていきたいと思う。
「諦めるな!」
まっすぐな彼女の声が聞こえた気がした。
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憧れの先の興味そして・・・。先輩後輩ペア。
彼の中ではここでの詩織がとても尊い存在なんだとおもいます。
ちなみにこの高校は2・3年生が生徒会になれる設定です。
詩織の唯一の男の親友、牧野がお気に入りです。また出したいなぁ。
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