●セリフ6『何時だと思っている!?』●

謝って欲しいわけでもなくて、心配したと言う事を伝えたいだけ。
でも、くやしいけど、出てくる言葉はそんな言葉。

『君に伝われ』
 森博之v中川加奈


びくっと身体を震わせ、声の主を見る。
そこにいるにはもちろん、彼だ。
「何時だと思っているんだよっ!」
お、怒っている。珍しく。
「…10時。」
壁にかかっている時計をちらりと見る。
「なにしていたの?」
私の様子を見つついつもよりも1トーン低い声が聞こえる
「課題…。学校の資料いるし、学校でやってしまえと思って。
 で、その後スーパーよってきちゃっ…。」
「なんで連絡しなかったんだよ!」
私が最後まで言い切る前に彼の怒鳴り声が聞こえる。
「な、なんで・・・。」
そういいつつ、後ろを向いてしゃがみこむ彼。
まるでへなへなという効果音が似合うように
彼の手にしていたものはヘルメット…心配して探しに行こうとしてくれたみたい。
「さっき、近くで救急車の音きこえて・・・それで・・・携帯でないし・・・」
途切れ途切れの彼の声に、携帯が授業中のままマナーモードになっていたことに気づいた。
携帯を開く。
彼からの着信が並ぶ・・・。
・・・そうだ。この人はそういう人だ。
「ごめんね。」
そう言って私よりも背が高いはずなのに、小さく見える背中を抱きしめた。

彼は猫だ。普段は勢いがっているけど本当は優しい、さびしがり屋の猫だ。
不器用で、素直に言葉を伝えれない人。
普段はいつも笑顔で人当たりがいいのに、
抑えきれない感情表現はすこし苦手で、誤解されちゃう事もある
だけど…それでも十分伝わるから。
「ありがとう。心配してくれて。」
だから、愛しい。やさしく抱きしめたくなる。

悔しいけど恥ずかしくて、言葉に出来ない。
でも、君には心がきちんと伝わる。それが嬉しい。


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これ、頭と終わりだけ博之、本編が加奈視点です。
どちらの名前を先に書くべきか迷ったんですが博之で。
いつも大切だからこそちょっとしたことが不安になる。
カナチのが精神的には大人かもしれないです。

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