●セリフ39『一緒に寝よう?』●

女の子だけの座談会が始まる。

『パジャマパーティ』
  高瀬3姉妹


「ねぇねぇ、久々に一緒に寝よう?」
友里の唐突な提案に思わず詩織は『はぁ!?』と声をあげる。
「ど、どうしたの・・・?」
「いいから、いいから。お母さんとお父さんにも伝えたから。」
「はぁ・・・?」
友里にいわれそうとしか声が出ない。
何でこの姉はたまにめちゃくちゃ唐突なお話をするかな。
「日和も誘って、3人でね。私の部屋でいいかな。」
友里が詩織にそう言って笑う。時計はもうすぐ日和が帰る時間を告げる。
(あぁ、そういうことか・・・)
詩織は時計を見る友里をちらりと見る。
多分、それは姉の心配事から来た提案。本人に確かめる代わりに詩織は了解と告げた。


「じゃぁ、寝る準備しますか。」
夜。友里の部屋に集まったのは3人。
「3人で一緒に寝るの久しぶりだね〜。」
自分の家なのになんだかわくわくしながら日和は言う。
「だね。」
日和にそう同意する詩織。その表情はすこし楽しそうだ。
(可愛い奴らめ・・・)
友里は二人の様子を見てにこにこ笑った。

「あんさ、日和…。」
お泊り座談会は友里のそんな言葉からはじまった。
「最近、孝之と何かあったでしょ。」
「えっ!?」
「うわっ!直球。」
そんな友里の発言に思わず戸惑う日和。
そして、用度いいタイミングでつっこむ(?)詩織。
「和也の話聞いてても思うし、なにしろ日和が孝之の話をするのをさけてるじゃん。」
「だからって、言い方があるでしょ・・・」
そうつっこむ詩織は黙った日和を見る。
「私も友里と同じ意見。なんかあったでしょ?聞いてほしいなら今聞くよ?」
詩織はそう心配げに言う。
日和を見る友里と詩織。その表情は妹を心配する姉2人。
「二人とも…ありがとう。」
きちんと自分を見てくれていたことが嬉しくて、日和は笑う。

「あのね・・・」


「へぇ!?告白…!って・・・」
「「ようやくかぁ〜。」」

先週おこった出来事を説明した日和に対して、
2人の反応は意外とあっさりしていた。
「へ?」
「孝之、ずっと言おうとしてたしね。」
「ついに言ったかぁ。…遅いけどね。」
「え?」
「何?日和。」
友里と詩織の冷静な会話にぽかんとする日和。
「びっくりはしないの・・・?」
「したけど・・・。ずっと言おうとしていたの気づいていたし」
「どっちかっていうと、あぁ。ついにかって感じ。」
詩織はあいつはへたれだしとポツリとつぶやくと
「日和だって、なんとなくでも孝之の気持ちに気づかなかったの?あれだけいて。」
友里はさとすように日和に言う。
一瞬黙る日和。
「…・・・だって、そんなの、うぬぼれっぽいし・・・。」
ぽつりぽつり言う日和。
そう、なんとなく思っていた。
さすがに鈍い自分でも思った。彼が自分に惹かれ始めているのではって。
「それに・・・関係が変わるのが怖い。今のままでも一緒じゃない。いいじゃない・・・。」
そう。彼氏、彼女っていつか終わる。
それは姉を見て知った事実。
それに、オツキアイをしたら多分今と変わるんだろう。それが怖い。
なら、今のままがいいんじゃないかなぁって思う。
「日和・・・それって理由として微妙。」
詩織はそうビシッと言う。
「だって、人の気持ちはいつか変わるもん。」
日和にそういう言葉はどこかさびしそうで、自分に言っているようにも聞こえる。
「そうだね。孝之だって日和のこと最初から好きだったわけじゃなかったんだしね。」
うんうんと頷く友里は、困った顔の日和ににこっと笑う。
「とりあえず、もう一回自分で考えてみなよ?また、悩んだら話聞くしさ」
「わかった・・。心配してくれてありがとう」


少し落ち着いた日和と、3人で話をしているうちに夜は更けていく。
そして、いつの間にか日和が眠りに落ちた頃。

「そういえば、詩織は大丈夫?」
ふと友里は布団に入ったまま詩織に話しかけた。
「さっきの『人の気持ちはいつか変わる』ってこないだ悩んでたのと関係あるでしょ」
「まぁね。」
詩織はそう短く返答する。
「ねぇ・・。」
しばらくの沈黙の後、詩織は言葉をかける。
「恋ってどうやっておちんの?てか、どんなかんじ?」
「・・・え?」
あまりにも予想外な言葉に驚く友里。
「…ごめん。聴かなかった事に・・・」
「恋かぁ・・・そうだなぁ。一緒にいて、ワクワクするけどそのぶんきゅんと苦しくなるよ。」
詩織にそう回答をする友里。
「でもね、恋に落ちる瞬間も、その時の気持ちも人によってちょっとずつまちまちなんだ。
 共通しているのは切なくなったり、嬉しくなったりするって事かな。」
そう。恋ってセツナイ。でもその分嬉しくなる。幸せになる
「そっかぁ・・・・」
詩織はその答えにそうつぶやいた。

「・・・?詩織???」
しばらくの沈黙にどうしたのかと友里は声をかける。
返事の代わりに聞こえるのは気持ちのいい寝息が2人分。
「やれやれ。」
友里はたまにしか見せない姉の表情を見せ、二人の布団をかけなおす。
暗い部屋。カーテンの合間から星空が見える。
「人の気持ちはいつか変わる・・・んだなぁ」
それを見て、友里はそう誰に言うでもなくつぶやいた。
「おやすみ。」


それぞれが何かに悩んでいる。
わかっているのは一つだけ。
とりあえず、悩んでばかりもいられないって事。


*********comment*******
39と言うことで「77話」中半分到達。
今までのエピソードから踏まえた感じで。
39は3姉妹にしようってずっと決めてたので満足です。
何かが変わっていく。その前に・・・


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