●セリフ38『俺をあげるよ』●

季節はもうすぐ桜が舞う季節
それは、新しいはじまりの季節。

『ホワイト?デー』
  高瀬詩織←藍原久司


「な、何で…あんたがここにいるのよ。」
高瀬詩織の第一声はそんな嫌そうな声だった。
「え?それは愚問です。」
目の前にはいつものようにうさんくさい笑顔を振りま藍原久司。
「詩織さんに会いにきたんですよ。」
「うそるけ!そうなんどもからかわれるかっ!腹黒。」
藍原のその胡散臭い笑顔と意味のわからない行動にどれだけ振り回された事か。
「はははぁ、そんな腹黒なんて傷つきますよ〜。」
そう答えるあいつ。
・・・・・・全然傷ついていない。

「本当に、詩織さんに会いたくて来たんですよ。バイトいつ終わります?」
「あと、30分ぐらい・・・。」
「なら、待っていますね。」
藍原はそう私に言うと、さくさくとテーブルについてコーヒーを片手に読書を始めた。
・・・一体、何をたくらんでいるんだ???
わけがわからないけど、だからといって追い出すわけにも行かないし
てか、後輩だし追い出すとかは違うし・・・
とりあえず、バイトに集中する。

「あの人、高瀬さんの彼氏ですか?」
最近バイトに入った新人の田中さんに聞かれる
・・・って、はぁぁ????
「んなわけないっ!」
私はその問いにさっくりと答える

なんで、そうなる!ただの後輩だ。
そんな私に田中さんは『はぁ・・・』と声をもらした。


「で?用件って???」
バイト終わり、私は待っていた藍原と近くの店にいく。
あのまま、店で話すのは後々面倒だし、スタッフが聞き耳を立てていそうだしね。

「はい。詩織さん、今日は何日でしょうか?」
いみがわかんないという様子の私に藍原は質問をする。今日?
「今日は3月14・・・・あ。」
「はい、ホワイトデーです。」
気づいた私に満足げな表情を見せる藍原。
「おかえし、もってきました。」
「へ〜…って、私あげてないし。」
「でも、ガトーショコラ奢ってもらいましたから。」
私の答えに藍原はさらりと言葉を返す。
そう。バレンタインデー、バイトに入った私は藍原にケーキを奢った。
けど!けどさ・・・。
「別に、バレンタインデーだからじゃないんだけど。」
てか、チョコケーキにしたのは藍原だ。
「でも、僕の中では貰ったうちに入りますよ。それに、きちんと言いましたよね?
ホワイトデーを楽しみにして欲しいって」
「あぁ〜。いってたね」
そうだ。間抜けにもあいつの策にはまったんだ。
「というわけでどうぞ。」
藍原はそう言って、手をさしのべる・・・手を・・・?はぁ?

「なにしてんの?」
「プレゼントを差し出しているんですよ。」
よく理解できない私に当然のように言う藍原。
っていったって、藍原は何も持っていない。
「なにもないんですけど・・・?」
「そんなことないじゃないですか。ほら。」
私の言葉に藍原はそういうと自分を指差し、にっこり笑う。
「僕がいるじゃないですか。」
「は?・・・・・・ごめん。理解できないわ。」
「つまり、詩織さんには・・・」
首をかしげる私に藍原は笑うと言葉を続けた。
「僕をあげます。」


い!??


「詩織さん?」
一瞬固まる私。それって、どういう意味なんだ・・・????
「意味がわかんない・・・。」
「ははは。言葉の通りですよ・・・。」
ますますわからない。てか、
「別にいらないよ。そんな、バレンタイン自体そんなされる事してないし。」
しかも、そんなわけのわからないものはいらん!
「そうですか・・・。じゃぁ、せめてここ奢らせてください。」
藍原はそういうと立ち上がった。
いつもの笑顔。…やっぱ冗談か。思わず安堵のため息が出る。



分かれる直前、
「あ。さっきの言葉ですけど、冗談じゃなかったらどうします?」
そんな言葉に詩織がまた変な顔をするのはそれから5分もしない後。

*********comment*******
ついにかいたぞ!藍原→詩織!
ホワイトデー覚悟してくださいといわせてから長かった。
正直、38はこれをかく事が決まっていました。
藍原の良くわからない感が好きです。


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