●セリフ35『迎えに行くよ』●

「女の人」って裏で何を考えているかわからない。
そう思っていた僕は
女の子との付き合いをまじめにしなくなっていた。
でも、彼女に会ってから思った。
それは違うんじゃないかって…

『桜咲く季節に』(1years ago)
 森博之+中川加奈


携帯がメールが届いた事を伝える。
森博之はそれをとった。
無事に大学に合格し、入学式を済ませ約一週間が過ぎようとしていた。
慌しいスケジュールもひと段落。
ようやく、1人暮らしにも慣れ、大学生になってはじめての金曜日だった。
「あ。加奈ちゃんだ。」
メールの相手は昨年、この大学の試験の火に出会った女の子。
今は仲の良いメルトモだ。
『大学、だいぶ慣れた〜?』
『うん。加奈ちゃんは?』
お互いの些細な事をメールでやり取りしている。
どうやら、最近彼女は大学でできた親友の誘いでサークルに入ったらしい
「いい先輩もいて、楽しくやっていけそうかな。」
「そっか。どんなところなの?」
メールでのやり取りから、いつの間にか電話に変わっていた。
外は綺麗な星空が広がっている。
「あ。空綺麗…。」
ふと窓の外を見てつぶやいた博之。
その言葉に反応した加奈が「うん。綺麗だね」と電話越しに答える。
それは、自分以外誰もいないはずなのに部屋にもう1人いるような暖かさを感じる
1人暮らしを初めて間もない自分には、それが心地いい。
そして多分それは電話越しの加奈も感じているみたいで、
いっこうに携帯を切る気配はない

たわいもない会話は続く。
「明日はようやくお休みだね。」
「加奈ちゃんはどうするの?」
博之の言葉にすこし悩む加奈。
「特に予定ないんだよね…あ。そうだ。」
「ん?なに?」
思いついたと明るい声をだす加奈。
「博之くんがよければ一緒に遊ぼうよ。」
「え?」
「博之君、昔こっちすんでたんでしょ?探検しつつ案内してくれないかな?」
なんて…。だめかな?
「ううん。いいよ。」
電話越しに苦笑する彼女に思わず、上ずった声が出た。
「じゃぁ明日。迎えに行くよ。」
「うん。ありがとう。」

切った携帯。
それをみて博之は戸惑っていた。
「やば・・・。」
早く会いたくて家の場所を聞いてまで迎えに行くと言っていた自分。
女の子と会うなんて結構あったのに、明日どこに行こうとワクワクする自分。
なんだか明日が楽しみで仕方ない自分。
それは恥ずかしい初恋の頃の自分に似ていて恥ずかしいが
「なんか悪くないかな。」
彼女相手だったらそう思ってしまう自分。


明日、空は快晴
新しい気持ちが生まれる。

*********comment*******
1人暮らしを始めたころって携帯が手放せませんでした。
そんなことないですかね?
なんか、少年くさい博之が書きたかったのです。


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