●セリフ34『お土産よろしくv』●

時間は過ぎていく。
当たり前なのに忘れていた。

『そして、季節は…』
 高瀬友里+佐川智哉


「あれ?佐川さんは行かないんですか?」
連絡用のホワイトボードを見て友里は驚いたように聞いた。
「うん。残念だけど。」
友里に聞かれた佐川はそう苦笑しながら答えた。

『ドライブ』は学校が出資するタウン情報誌を作る活動をしている。
情報誌を作るにはもちろん、取材が欠かせないわけで、
『取材』という名目でよく有志を募って出かける。
その中でも、少し遠出しての取材はイベント気分で結構みんな参加する。
「珍しいですね。佐川さん、遠出取材は必ず行くのに。」
サークルの団体責任者を務める佐川はその責任感からか殆ど参加している。
(いつもはスケジュール張に書いて予定空けてるのに。)
その珍しい行動がなんだか気にかかり、友里は首をかしげた。
なんせ今回行くのは人気のスキー場。
スノーボード大好きな佐川は必ず行きたがる場所だ。
「本当、佐川ついていないよな。」
そんなホワイトボード前での二人の様子に口を挟むのは佐川の友人。
友里にとっては先輩に当たる人物だ。
「佐川、この日説明会なんだってさ。」
「説明会…ですか?」
その言葉に首をかしげる友里。
「この日会社の説明会とかぶっちゃったんだよね。」
「俺らも、4月からは四年生だしな。」
佐川と友人はそう話してお互いがんばろうなと話している。
「そうか・・・。そんな時期なんですね。」
その様子を見て友里はそう驚きの言葉を放った。
「東京だっけ?お土産よろしく!」
「お土産よろしくおねがいします。」
「なっ!お前ら。」
友達と友里の冗談半分の言葉に佐川は突っ込み、笑った。


「は〜。」
帰宅し、部屋に入ると友里はため息をついた。

そうだ。自分だって三年生になる。
当然のように季節は過ぎていくのだ。
そういえば去年だって、四年生になる先輩達はこの時期から大変そうだった。
当たり前のことなのだ。
なのに、何故だろう。

「なんか、去年と違う…。」
1人、明かりをつけない部屋の中。
友里はそうポツリとつぶやいた。
よくわからない変化に戸惑いながら。


なんでだろう。いつもと同じ冗談のやり取りなのに。
すごくぎこちなくしか笑えない

*********comment*******
時が流れていきます。
今、私の友人達にも就職活動中の子がいます。
佐川と友里はこれからの流れが見えません。
少しでも納得した関係になればいいなぁと思います。
まぁ、正直77話まで書ききったら
どの子も納得した関係で、納得した生き方をして欲しいと思っています。


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