●セリフ19『今からあえない?』●

うまれた理由もわからない気持ち
回る 回る
ただ ぐるぐると。

『星空の先に見えた出口』(1years ago)
 高瀬友里+佐川智哉


「佐川さん、どうしたんですか?」
「高瀬、わけがわからないって顔しているね。」
「はい。」
「まぁ、急にあんなメールが着たら驚くか。」
佐川さんは笑った。

土曜日。サークルの活動の後メールが来た。
それは佐川さんからのメール。
『今からあえない?』
そう書いてあった。


…というわけで(?)、私は現在大学の近所の公園にいる。
一体、何があったんだろう。
・・・もしや!とんでもない事でもしでかした?
しばらく私の様子を見て笑っていた佐川さんは急に真面目な顔で私に言った。
「さて、本題だけど・・・・、ヒロとなんかあった?」
「・・・へ??」
突然の事に思わず目が点になる。
「え、えっとぉ・・・・。」
「高瀬、顔にでやすいし今日ヒロとペアで写真とっていた時も
 様子おかしかったでしょ。」
・・・目が泳ぐ私にズバッと一言。
4月の頃から人をよく見ている先輩だなと思ったけど、侮れない観察力。
す、鋭いです…。

その、笑顔と雰囲気と優しさに甘えてしまったんだと思う。
思わず口に出てしまっていた。

「これって、どういう気持ちなんですかねぇ。まさか好きとか・・・。」
「…う〜ん、ちょっと待って。高瀬は高校の頃のあいつが思い浮かぶの?」
私の言葉を最後まで聞いてくれた佐川さんはふとそう聞き返した。
「はい。そうですけど?」
「今の自分とあいつとかは?」
「えぇ!?そんなの全然ですよ。」
いつも思い浮かぶのはあの頃の思い出だけ。
楽しかった日々。私に向けられた笑顔。
あいつの顔の先にあるあの頃のあいつ。
それを聞いてしばらく佐川さんは考えた後、私を見ていった。
「・・・結局は高瀬が見つける答えなんだろうけど、俺の見解をいっていい?」
「は、はい。むしろ、混乱していて困ってたので。」
頷く私の言葉に佐川さんは少しためらった後、真面目な顔で口を開く。
「第三者だから思うのかもしれないけど、それって思い出にひたっているんじゃないかな?」
「え・・・・・」
「久々に再会して、段々と高校の頃の様に仲良くなって、
 だぶってきたんじゃないのかな?」
佐川さんの言葉になにかが当てはまっていく。
「た、確かにそうかも…。」
「まぁ、人の気持ちって様々だから違うかもしれないけど・・・」
佐川さんは星空を眺めつつ言葉を続ける。
「昔のあいつとも思い出しかでてこなくて、
 それであの頃ああだったらとか思っているんなら多分・・・
 好きとかいうんじゃなくて思い出の中の2人に浸っているんだと思う。」
・・・なんだか過去に捉えられてしまっているんですね。
そうぼやくと佐川さんは首を横に振った。
「でも、思い出は美化されるって言うけど、
 ひたるほどにいい思い出があるのは誇っていいと思うよ。」
そういって佐川さんが微笑んだ。
その時、心で回っていた気持ちの出口が見えた。


出口の先にあったのは
あの頃の自分の思い出を誇らしく思う気持ち

そして、優しい先輩。

*********comment*******
思い出を乗り越えてあたらしい何かが産まれる。
1年前元カレカノシリーズ終了です。
佐川さんは面倒見のいい先輩。
星空の先には新しい朝がくるんだ。

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