●セリフ13『ばっかじゃねぇの』●

悪いけどあいつとは物心付いたころから腐れ縁で、
あいつのことは昔から全部知っていた気でいた。
でも、最近はじめて知った事も多い。
例えばあいつが結構可愛くて、
俺があいつのことを好きだったってこととか。

『素直になれない』
 羽住孝之→高瀬日和


「あ。高瀬さん、ちょっと・・・」
昼休み。教室の入り口で、日和の事を呼ぶ男の声がした。
 ・・・思わず全神経がそっちへ集中する。
それは、生徒会長で、女子生徒に人気のある藍原先輩だ。
「あ、藍原先輩。」
女子生徒が騒ぐ横でマイペースに挨拶をし、入り口へ向かう日和。
・・・なんであいつはそうなんだよ。
誰に対しても明るくって、好意的で・・・そこがいいんだけどムカツク。
・・・聞こえないけど、笑顔が見える。
「あ、はい・・。」
「じゃぁ、後で・・・、」
なんか仲いいみたいで・・・腹が立つ。

「やっぱり藍原先輩ってもてんの?」
世間話のようにとりつくろいながら、机の向かいに座る女友達、リサに聞く。
「うん。かっこいいし、頭いいし、紳士だもん。」
「へぇ〜。」
「ま、孝之ももてるけど、またベクトル違うしなぁ〜。」
「ふ〜ん。」
そっけないなぁなどと文句言うリサの声を横目に、どうしても入り口を見てしまう。
・・・にしても、長い!長いぞ。
「孝之〜、お前凝視しすぎだぞ。」
パンを買っていたキョウがにやにやしながら俺に声をかける。
「うっせ〜。」
「なんか、親密そうに話しているよなぁ。」
俺の凝視していた方見てそう続けるキョウ。
それに、リサが頷く。
「あの二人、生徒会の中でも仲いいらしいよ。
 ・・・まさか藍原先輩、高瀬さんの事すきとか?」
リサの言葉が頭に絡みつく。
「ばっかじゃねぇの。あいつが、もてるわけないだろ。」
「・・・孝之、高瀬、結構人気有るんだぞ?」
思わず出た言葉にキョウが『そんなこと言っていいのか?』
といいたげな顔で反論する。
それにリサも同調して、俺に同じような顔を向ける。
「うん、素直で可愛いし、いつも笑顔で人当たりいいもんね〜。」
「だよなぁ〜。このままでいいのか、お前。」
「うるせぇ〜。」
いつものようにからかわれるようなやり取りへと発展する。
・・・まぁ、からかう程度で終わるからいいんだけどさ。

こいつらに言われなくとも、今ではわかっている。
あいつがどんなに魅力的かなんて、
こっちがはらはらするほどかわいい事も知ってる。
・・・そして、そんなあいつを俺は好きだってことを。
あいつのことは俺が一番知っているんだ。


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久々に書く孝之とヒヨちゃんの話。
悔しいほどに素直になれない。でも、あいつの事は俺が一番知ってるもん
・・・って言うノリで書きました。(なんだそれ)
反抗的な「ばっかじゃねぇの」は孝之しかないなとすんなりきました。
リサとキョウがお気に入り。
そして、藍瀬とヒヨの話す話題は詩織さんの事だったりします。

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