●セリフ12『聞いてなかったでしょ』●

長い付き合いが出来る関係
多分あいつだからできるんだろうな。

『あの頃の僕ら』
 羽住和也+森博之


「入学式かぁ〜。かったりぃ。」
「仕方ないじゃん。先輩に頼まれたんだし。」
めんどくさそうにしているヒロをなだめつつ目の前の光景を見る。
人、人、人・・・確かにかったるいけど、だからといってサボるわけにもいかない。
入学式の人ごみの中、僕らは恒例サークル勧誘係に任命された。
何をするかというと、看板を持ってチラシを配る。あわよくば入部してもらう。
いや、それだけなんだけどこの人ごみの中じゃきつい。
他のサークルの人たちも大変そうに顔をしかめている。
「先輩に頼まれたからといって、なんでこんな格好なんだよ?」
・・・確かに、それには同意。
正直、在校生は目だって部員を獲得しようと必死だ。それは解る。
近くにも水泳部が水着姿でいたり、漫画研究会が猫耳コスプレなる物をしている。
・・・でも、これはないだろう。
なんせ、僕らの格好は何故か白タキシード…これじゃホストだ。
「お前ら、仲いいんだし、バランスいいから!」
と先輩達が即決していた。しかも、一番人通りの多い正門前で。
・・・僕ら以外のメンバーは普通のスーツにカメラなどという記者姿なのにあんまりだ。
「で、でもほらさ、加奈ちゃん喜んでいたし。」
機嫌が悪くなって馬鹿馬鹿しいとかで帰られて1人になると困るので、
友人としては一番の特効薬を出させてもらった。
「まぁ、そうだよな。」
まさに特効薬。まんざらでもないみたいだ。
「加奈と会ってもうすぐ1年かぁ・・・。」
懐かしそうにヒロはいった。そう。僕らが再び同じ学校に通って1年がたつ。
ヒロが転校して、トラウマを持ってしまった友里
そして、久々に会ったヒロは友里の友人の加奈ちゃんと付き合い始めた。

正直、最初はどうなるのか心配だった。
でも、見守るしかできなくて、
ただ友人達を信じていた。
あの頃の僕らの関係を考えると、1年後にこうやっているのが奇跡だと思う。

お互いがきちんと思いやったり、やられたり。
ここまでいい関係でいれるのってすごいと思う。
それは、多分僕らが成長した証なのかな。


「あの頃から一年か。」
思わず言葉に出ていた。そして、その後、横から小さくヒロの声がした。
「これからもよろしくな・・・」
「え?ヒロ何かいったの?」
「おい、カズ。お前聞いていなかっただろ。」
小さいから聞き取りにくかったけどはっきり聞こえた。
だけど、中学の頃からの友人としてはそんな素直なあいつは貴重で、
聞き返してみたらもちろんヒロはいつもどおりの態度をかえしてきた。
・・・全く素直じゃない奴だよね。

「さぁね。」
笑いながら僕はこちらこそと聞こえるかどうかの声でつぶやいた。


************comment****************
男同士の友情。ようやく出せました。和也です。
ヒロの親友で、和を乱さないようにフォローする係。
面倒見のいい、いろんな意味で性格のいい奴です。
前書いたのから少しだけ修正しました。
どろどろくさいかもなぁと(− ー;)

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